リカバリー・ダイナミクス®

リカバリー・ダイナミクス®(RD)は依存症回復施設で用いるカリキュラムです。
RDはAA(アルコール依存症者の自助グループ)の基本テキスト『アルコホーリクス・アノニマス』(ビッグブック)に説かれている回復のプログラム「12のステップ」(後掲)を深く理解し効果的に実行するための方法で、1977年に誕生して以来、実に多くの依存症者の回復を助けてきました。

RDを作ったのは、主たる考案者である故ジョー・マキュー氏も含め、アルコール依存症から回復した本人たちでした。彼らは自分たちの回復の経験から、ビッグブックに基づく施設用のカリキュラムが必要であると考えました。

RD誕生の突破口となった出来事について、『RDカウンセラー・マニュアル』は次のように伝えています。
「リカバリー・ダイナミクス®が形を整えたのは、セレニティ・ハウスのカウンセラーたちがAAの方法を30日間の治療プログラムに翻案するカギを発見した1977年のことである。ビッグブックの研究会を行っていたある晩、一人の仲間がこの本では目的(purpose)は目標(goal)と同義で使われていると言った。AAの共同創始者ビル・Wの用語法の特徴に気づいたとき、ビッグブックの治療方法が理解できたのだった。そしてこの理解を得て、リカバリー・ダイナミクス®の開発が始まった」

ジョーたちは、AAの12のステップを次の三つの目標に順番に到達するためのプログラムとして理解しました。

第1の目標:問題は何かを知る(ステップ1)
第2の目標:問題の解決策は何かを知る(ステップ2)
第3の、そして最後の目標:解決策を手に入れるために必要な行動を実行する(ステップ3から12)

 

この理解をもとに、ジョーたちがクライアントに12ステップを伝え、実践を促していくと、クライアントの回復率が上がり始めました。この実績を踏まえて著されたのが、1977年に発行された『RDカウンセラー・マニュアル』第1版です(その後、第2版、第3版が発行されています)。

RDは依存症に対する新しいアプローチではありません。
しかし、充分なエビデンス(証拠)が蓄積されている12ステップ・プログラムを回復施設で使えるように翻案したという点では、革新的な方法であるといえます。

現在、RDはアメリカだけでなくヨーロッパやアフリカの施設でも実施されており、大きな成果を挙げています。日本では2010年に設立された(社)セレニティ・プログラムが、RDのライセンサーであるケリーファウンデーション(アーカンソー州リトルロック)と包括的な実施許諾契約を締結し、希望する施設への導入、定着支援を行っています。

AAstep

セレニティプログラムの許可を得て掲載

AAの12のステップ

  • 私たちはアルコールに対し無力であり、思いどおりに生きていけなくなっていたことを認めた。
  • 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
  • 私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
  • 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った。
  • 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
  • こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
  • 私たちの短所を取り除いてくださいと、謙虚に神に求めた。
  • 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
  • その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
  • 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときはただちにそれを認めた。
  • 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
  • これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

(AAワールドサービス社の許可のもとに再録)

 

リカバリー・ダイナミクス®創設者 故ジョー・マキュー氏

profile

1928~2007年。リカバリー・ダイナミクス®を作り上げ、12のステップの普及に生涯を費やした黒人のアルコール依存症者。
欧米の回復の世界ではジョーの名は「ジョー&チャーリーのビッグブックスタディ」セミナーで広く知られている。
日本ではジョーの著書の翻訳本『回復の「ステップ」』『ビッグブックのスポンサーシップ』『プログラムフォーユー』(共著)などがロングセラーになっている。

※リカバリー・ダイナミクス®は一般社団法人セレニティ・プログラムの登録商標です。

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